手っ取り早い方法

さて、クラッシクを聴こうかなと思ってみても、
あまりに漠然としていてどこから手を付けて良いのかわからないという方の為に、
私が採っている方法をご紹介しましょう。と言っても、たいしたものではないけど。

「残されている著作物に、完全に無価値なものは無いはずだ。」
これが前提となっています。
録音が残っている作品、或いは本などは、誰かがその価値を認めたものでなければ残っていない。
偶然残されたものもあるが、それは希少な存在だ。
なので、どんな作品であろうと、本やレコードなどに残っている作品は、
自分にとってなんかつまんないなぁと感じられても、無価値ではないはずなのです。
価値が探せるはずだと、私は思います。

音楽は、当然生演奏を聴いたほうが良い。何故なら、音楽演奏はその場の空気を震わせるものであって、
それを体感したほうが良いからだ。録音されたものは、なかなかそれが体感できない。
自分の脳内でその部分を足さなければならないが、それには少なくとも一度は、現実の体感が必要なのだ。
なので、
「私は家族全員で盛装をして、月に一度はコンサート・ホールに出掛けています。」
という方は、それが一番正しい道であります。
その後、静かなレストランで、ワインと素敵な料理と会話。これがベスト。

なかなかそういった環境は少ないでしょう。なので、録音されたものを聴いてみましょう。
その手順ですね、私が言いたいのは。

まず、指揮者を絞って聴く。
小沢さんとか、カラヤンとか、バーンスタインだとか、最初は誰でも良い。
小沢さんについて言うと、
色んなオーケストラを指揮したものが残っているし、
色んな曲が演奏されている。
指揮者を絞れば、色んなオーケストラに出会え、色んな作曲家に出会える。あまり偏らずに。

そしたら、次からは、次の指揮者に移ってもいいし、
特定のオーケストラに移ってもいいし、
特定の作曲家に移っても、いい。

そのうちに、好きなオーケストラとか、好きな指揮者とか、好きな作曲家とか、
何かそこを分ける違いが意識されてくるだろうと、思う。

同じ曲なのに、何で指揮者によって違うのだろう。
オーケストラは、どのように曲を理解し、どのように指揮者に同調していくのだろう。
作曲者は、何故いくつもの作品を描いたのであろう。
そういったものを聴き取っていく作業は、聴く個人それぞれの好みに分かれていく。

とりあえず、何か一つの基準を決めて聴かないと、
あまりに無軌道になってしまって、誤解を産み易くなってしまうでしょう。

そして何時か、何故俺はこの曲を聴くのだろうという根本的な何かが見えてくるのではないだろうか。

以上が、私が実行している方法です。

以下、個人的な意見を書きますが、
音楽というのは、時間の共有感、つまりライブ感を味わうのに最適なものではないかなぁと、
私は思っています。
音楽は他の芸術作品と違って、時間の厳密さを聴く者に強制してきます。
短くしたり、長くしたりといった聴き方が、出来ないのです。
部分的に聴く事は出来ますが、その部分の時間を変えることは出来ない。
つまり、1時間かけて演奏された作品は、1時間かけて聴くしか無いということです。

本のようなストーリーは、
本の仮想現実内でストーリーが流れている時間と、読んでいる間に流れている現実時間が決定的に違っています。
一生を描いたストーリーを、数時間で読むことが出来ます。

音楽をストーリーとして考えることも出来ると思いますが、
演奏されている間に流れている時間はそのままに受け取るしかありません。

どちらが優れているとか、そういったことではありません。
音楽は、そういった時間の伸び縮みを許さないということです。

最近集中してグレン・グールドのピアノ作品を聴いているのですが、
この人の演奏は、
作曲者の意図を徹底的に追及した上で、
面白いように伸び縮みさせ、強弱をつけながら何かを際立たせているように思え、
感覚的には、命綱無しで綱渡りをするような厳しさが感じられます。
オーケストラではありませんが。
この人の作品を聴きながら、
ああ、これってヨハン・シュトラウスのメロディーだったのかという作品に、
多く出会いました。

こういった体験から、ヨハン・シュトラウスのオーケストラ演奏に向かうとか、
そういったつながりが産まれるところにも、音楽の力を感じます。

私はアマチュアのギター弾きですが、弾くというのが音楽体験上最も大きい。
実行、体感両方ですからね。
上手い、下手は、全く関係がありません。
適当に、一本鳴らせば、それが音楽です。間違いなく。
思い通りに、鳴らせばよいだけです。
それが、私にとっての音楽であるはずですが、
やはり、
大聖堂は弾けるようになりたいし、
11月のとある日を弾きながら、
誰かに愛を語りたい。

これは、プレーヤーが陥る魔力というべき、
自己中心的な魅力があります。

最後のほうはかなり勝手な言い分になってしまいましたが、
最初のほうは、結構良い方法なのではないかなと、私は思います。
========おしまい=========
シュトラウスというのは、色んな人がいて、
俺の場合混ぜこぜになったいるのでしょう。
===3/22日追記===