新潟に、帰る。。。

俺は東京スカイツリー駅近辺に勤務先があるので、ほぼ毎日その駅を利用している。
プラットホームは2階にあり、1階部分はホームに沿って通路となっている。
構造は文章では説明しにくいので省略するが、2階へのエスカレーターに向かって歩いていたと想像されたい。
エスカレーターの手前で、杖をつきながら歩いている、80歳は超えていると思われる老女に声を掛けられた。
「上にあがると、外に出られますか?」
俺は当然というか、改札の外に出たいから、上に改札があるのかという質問だと思った。

「いえ、上はホームなので、改札は前にも後ろにもありますけど。」

「いや、私は外にでたいの。」

「あぁ、スカイツリーを見学されるんですか?。」

「いや、それは今見てきたの。帰るついでにせっかくだから見物しようと思って。」
笑顔を浮かべている。

この時点で、俺の脳は相当な衝撃を受け、揺れ始めている。

「それじゃ、何処に行きたいんですか?」

「帰りたいの。」

ここまでで、3分くらいは経過している。

「あぁ、それじゃ電車に乗るんですね。それなら、このエスカレーターで上がれば乗れますが、どこまで帰られるんですか?。」

「新潟まで、帰るの。」

ここで、激しく脳が揺れた。

「え?それじゃ、新幹線に乗るんですか?」

「そうなの。」

さて、考えた。東京駅に行くのか、上野駅か。

東京駅に行くとすると、
上にあがって曳船駅で半蔵門線錦糸町駅に行きJRに乗り換えて東京駅を目指す。

上野駅に行くとすると、上にあがって浅草駅で、っとそこは終点で、駅を出て乗り換えなければならない。

これらをうまく説明出来たからと言って、この老女は新潟に向かう列車にはたどり着けないだろう。

しかし、この人は、ここにどうやって来たのだろうか。それがわかれば、逆回転すれば帰れるのだが。。。

これは、俺の手には負えないと判断して、
「この先の改札に駅員さんがいるので、そこまでご一緒しましょう。」

そこまで御案内して、駅員さんに引渡しましたが、その駅員さんも困ったことだろうな。

ここから東京駅に向かうバス路線も、確か存在していたと思う。それが間違いないはずだ。

しかし、俺は、ここで放置した。

ちらっと、錦糸町までご案内しようかなと、ほんとに、ちらっと脳裏をかすめたのだ。

俺は小さいな。せっかく生まれた接点だったのに。
こうやって、何かの接点を失うのだ。

========深く反省=========