河童
誰も見てないときに、河に近づいちゃいけないよ。
友達と一緒にいても、だめさ。
一緒にいる友達全員を、誰かが見てないと。
おいら達は、その刹那をいつも狙ってる。
おいら達はね、おいら達の理屈で生きてるんだからね。
河ってのは、おいら達の世界なんだ。
どんなにたくさん人がいたとしても、油断しちゃいけないよ。
目を離された奴は必ずいるもんだし、
ほら、河に用を足しに来る奴なんかも、いるからね。
おいら達もね、不思議なんだ。
みんな知ってるはずだと思ってたんだが、
まぁ、仕方ないな、他人に無関心なもんだからな、人間なんて。
あんたが思ってる河は、ほら、
例えば土手があって、橋が架けてあったり、水が流れてる、
そいつだろう?
馬鹿言っちゃいけないよ、
おいら達は都会だろうが、空だろうが、ビルのなかだろうが、
好きなところに流すんだよ、河を。
よく見なよ、他人を。
見られるようにしなよ、自分を。
一人になりゃ、持ってくよ。
おいら達が苦手なのはね、
おいら達を見ようとする奴だね。
そいつは、一人ぽっちでも、持ってけない。
よく見なくちゃなんないのは、人間に限らないってことだね。
まぁ、よく考えて、
持ってかれないようにするんだな。
おいら達はね、
境界を流し、そこに立ち、
待ってるんだ。
あ、読んじゃって、夜中にトイレいけなくなっても知らないよ。
キュウリのスライスをおでこに貼るとね、
まぁ、おいら達は笑い転げて近づけない。
他人に見られると、
そいつらも笑い転げるかもしれないが、
それも悪くはないんじゃないかな。
あ、ドールばななのシールも効くかもよ。
==============おしまい==============