錆びたナイフ
ナイフをふるうと、おそらく自分を切り裂く。
貫こうとすれば、おそらく自分の心を貫く。
木を刻めば、掘り出すのは自分の姿だろう。
心を貫いたならば、死んでしまうだろう。
以上は、おそらく正しいナイフの使用法だ。
自分は正気を失ってめちゃめちゃにナイフを振り回し、
他人をも傷つけてしまう可能性があり、
錆びたナイフでは傷だけで毒が廻り死んでしまう場合がある。
正気を失っているとしても、
切り付けてしまった責任は負いたいけど、
ナイフに着いていた錆びごときで自分以外の誰かに必要以上の迷惑は与えられない。
自分がナイフを持つならば、
ナイフを持つ者の最低限の礼儀として、
毎日きちんと研ぎ澄まし、出来れば毎日消毒して、
毎日ナイフの正常な状態を確認する。
しかし、そのナイフは誰にも見せず、
自分がふるうことのないように願い、
そのナイフを毎晩眺め続けるだけだろう。暗闇の中で。
そのナイフは、自分が持っているのかどうか怪しい。
なので、ふるうなど、とても出来ない。
持っていないナイフをふるった気になることがあるのが、少し気になる。