NHKラジオ番組より引用

NHKラジオでは、わくわくラジオという番組の中で、午前10時台から11時頃まで、ロングインタヴューを放送しています。そこでは男女、年齢、ジャンルといった一切の枠を問わず、精一杯、いきいきと人生を送っている方々を招いて、とても貴重なお話を村上(男性)、山田(女性)両アナが週交替でインタヴューされています。お二人ともとても言葉を大切にし、且つ聞き上手のアナウンサーで、1時間のあいだですが非常に濃密な空間を造りだされています。
今日は特に感銘を受けたお話でしたので、うまくお伝えできるかどうかわかりませんが、内容を要約して書いてみましょう。今日のゲストは松森果林さん。小学校の頃に進行性難聴を患い、やがて全く聴力を失いながら、現在ではユニバーサルデザイナー、エッセイストとして活躍され、結婚をされてお子様ももうけられて、いきいきとした人生を送られています。彼女は幸いにも、耳が聴こえて話せていた頃の感覚をたよりに言葉を話すことが出来るので、ゆっくりと問いかける村上さんの口元を読唇術で理解し、また手話通訳の助けも借りながら、自分自身の言葉で、送られてきた今までの人生を語られていました。右耳が聴こえにくくなって、でもすぐ直るだろうと思っていた時のこと、やがてある朝、突然、自分の出した咳きが聴こえず、ついに聴力を失っってしまった自分を知った日のことなど、つらい思い出を淡々と、しかも笑い声を交えながら語る果林さん。雪深い故郷に生まれた彼女は「もう聴覚障害者として認定を受けたほうがいいのでは?」という医師の言葉に呆然として町をさまよい歩き、やがて雪の中に行き倒れになってしまいます。薄れていく意識の中「もう、このまま死んでしまっても構わないんだ」と感じていた彼女は、奇跡的にも助けられた救急車の中で意識を取り戻し、その時はっきりと「私は生きているだけじゃないんだ。生かされているんだ。」ということを理解したそうです。そういったインタヴューの途中で、彼女のリクエストということで小田和正さんの”ラブストーリーは突然に”という曲がかけられました。記憶の中だけの音楽のリクエスト。私はそれだけで胸が締め付けられてしまいました。。村上さんが曲の裏で一緒に口ずさむと、村上さんを見ながら果林さんもまた一緒に口ずさんでいたそうです。進行性難聴は段々低音部の方から聴こえなくなって行くそうで、小田さんは男性としては声が非常に高いほうなので、聴力を失うその最後までラジカセに齧りつくようにして聴いていた曲だったのですと、果林さんはおっしゃっていました。音楽が好きで、それ無しには生きて行けないといつも思っていた私は、その話を聞いて愕然として、仕事をしていた手を止め、ラジオの前に佇んでしまいました。「俺は彼女のような運命を乗り越えられるのだろうか?・・・」
そして今携わっている障害者の為のユニバーサルデザインのことなども話され、とても感銘を受けました。そして、番組の最後に、村上アナがこんな質問をされたのです。「果林さんは聴力を失くされてから、よく聴こえるようになったものがあるとうかがっているのですが、それは?」と。。。。
果林さんは「耳が聴こえていた幼い頃、夜空の星を見上げている時、いつも思っていました。こんなに美しい星達なのに、なんで何も聴こえないんだろうって。でも聴力の無い今ははっきりと、鮮明に聴こえてきます。星達の声が。」
 なんと清らかな言葉なのでしょうか。
いつもは冷静な村上アナがしばし絶句され、おそらく泣いておられたんでしょう、声を詰まらせながら、「ごめんなさい(泣いてしまってと果林さんに)、私もそんな星達の声が聴こえるような美しい心を持てるようになりたいと思います。」と、番組を結びました。
細かいところは間違っているかもしれませんが、記憶をたよりに、番組を要約してみました。NHKの関係者の方、ごめんなさい。

宇宙が奏でる聴こえるはずのない星達の交響楽。それは至上のサイレント・シンフォニー。

====おしまい====