「空飛ぶトナカイ島 エピソード1」(soratobu tonakaijima episode1)
☆雪だるまのヘンナちゃん、登場 の巻き
みさきちゃんは大きな街に住んでいるので、たくさん積もった雪を見た事がありません。
だけど今日は、朝、目が覚めると、昨日の夕方から降り始めた雪が街中に積もっていたので、とても驚きました。
日曜日だったので、父さんと一緒に公園で生まれて初めて雪だるまを造ることになりました。
父さんはスコップでサッカーボールくらいの大きさの塊を2個作ってくれたので、みさきちゃんはそれを手やシャベルで丸く固めました。
そして二人一緒に片一方の塊を転がして、少し大きくしました。
都会の雪は湿っていて転がりにくく、すぐに雪のしたの土がみえてきたりして、ちょっと黒くなっちゃったりしました。
そしてその上にもう一個の塊を乗せて、ちっちゃな雪だるまらしい感じになりました。
とても重そうだったので、父さんは顔を真っ赤にしていました。
みさきちゃんはあぶないので、「それー。」と掛け声を掛けるだけにしておきました。
さて、みさきちゃんは、お顔をつくらなくちゃ〜と思いましたが、何も準備してこなかったので、公園に落ちているモノを探しました。枯れ枝を2本拾って、手にしました。
葉っぱをお鼻にして、輪ゴムでお口をつけて、さぁ、お目目はどうしましょう。
みさきちゃんは、コートのポケットに入れているお財布に、大事にしているオハジキがあるのを思い出しました。
父さんに、
「これ、ふたつ、お目目につけてあげても、いいかなぁ〜?」と聞きました。
父さんは、
「それ、大切にしてたんじゃないの?みさきがいいのなら、つけてあげたら。」と言いました。
みさきちゃんは、よ〜〜く考えて、とてもきれいなマーブル模様のオハジキを、つけてあげようと思いました。
だって、目はやっぱり綺麗じゃないとね^^。
さぁ、あとは、帽子です。父さんが、綺麗な広告の紙を拾って来て、折り紙の兜を折ってくれました。
ちょっと大きすぎましたが、それを頭にかぶせて、とうとう初めての雪だるまが完成しました。
「なんか、ちょっと変だな〜〜。」とみさきちゃんが言うと、
父さんが、
「そうかな〜〜、結構いけてるじゃん^^。」と言って、二人は大笑いしました。
みさきちゃんは、
「ちょっと変だから、ヘンナちゃんでいいや。」と、名前をつけました。
そして家に帰って、母さんにその日のお話をして、晩御飯を食べて、お風呂に3人で入って、寝ました。
次の日は、とてもいい天気で暖かく、みさきちゃんはヘンナちゃんの事がとても心配でしたが、幼稚園のある日だったので、幼稚園でいっぱい遊んで、おうちに帰るとすぐに公園へ行きました。
街の積もった雪はすっかり溶けてびしゃびしゃになっていましたが、ヘンナちゃんもだいぶ溶けてしまったけど、二段重ねのおそなえもちのようになってまだ残っていました。
みさきちゃんは倒れた枯れ枝の手を刺しなおして、お顔も、なんとか顔に見えるように直してあげました。
そしておうちに帰ると,母さんにまたその日の事をお話しました。
みさきちゃんは、ヘンナちゃんは、もっと変になっちゃったなぁ〜と思いました。
次の日も幼稚園から帰ると大急ぎで公園に行きましたが、ヘンナちゃんはすっかり溶けてしまって、跡形も無くなっていました。
「オハジキはちょっとだけもったいなかったな〜。」と少し残念でしたが、枯れ枝も、広告の帽子も、輪ゴムも、葉っぱも、すっかり無くなっていたので、なんか不思議な感じがしまた。
さて、その日の夜の事です。
みさきちゃんはベッドでよく寝ていましたが、「コンコン。コンコン。コンコンコン。」と窓を叩く音で目が覚めました。 みさきちゃんはちょっと怖かったけど、カーテンを少しめくってみました。
「あー、ヘンナちゃん。。。。」
なんと窓の外に雪だるまのヘンナちゃんが浮かんでいました。
だってみさきちゃんの部屋は2階にあるからです。
「みさきちゃん、僕に名前をつけてくれて、どうもありがとう。おかげで僕は、空飛ぶトナカイ島に行く事ができたんだよ。名前のある雪だるまだけが、そこに行く事ができるのさ。ほんとうに、ありがとう。」
「空飛ぶトナカイ島って?なにそれ???」
「空を飛ぶトナカイ達が住む島さ。そこで僕みたいな雪だるま達がみんなで、トナカイのお世話をしたり、サンタ様達のお手伝いをしたり、歌を唄ったりして毎日暮らしているんだよ。」
「え〜、サンタさんて、一人じゃないの?」
「みさきちゃん、サンタ様が一人だけじゃ、世界中のみんなにプレゼントを配りきれるわけないじゃん。トナカイはくしゃみ一回する間に地球を3回廻るくらいの速さでそりをひきながら飛べるけど、それでもサンタ様一人じゃ間に合わないよ。サンタ様は256人いるんだ。それはずーっと昔から決まってるのさ。空を飛べるトナカイは、もう数え切れないくらいたくさんいるんだよ。」
「ヘンナちゃんはトナカイさんをどうやってお世話するの?」
「それはね、立派な角を磨いたり、お鼻をふいてあげたり、いろいろあるんだ。トナカイは手が顔や角に届かないでしょ?。だから僕達がお世話するのさ。そうすると、トナカイ達はとても喜んで、元気に空を飛ぶんだよ。そういえば、トナカイさんのお鼻は真っ赤だろう?それはさ、僕達が冷たい手で一生懸命ふいてあげるから、真っ赤なんだよ。みさきちゃんのホッペやお鼻も、寒いと赤くなるでしょ?真っ赤じゃないと、空を飛ぶ力が無くなるんだよ。」
みさきちゃんは、そんな島の事は見たことも聞いた事もなかったので、
「その島、どこにあるの?。」と尋ねました。
「失われていく心の中さ。」 ヘンナちゃんは少しニヒルに答えました。
「何それ?。。。」
「ひとはさ、生きて行くうちに、だんだん大切な心を失っていくのさ。みさきちゃんも、お母さんのお腹の中にいた時の事とか、もう覚えていないでしょ?それは仕方ない事なんだけどね。だって、いろいろ忘れてしまわないと、新しい思い出をつくれなくなるからね。お友達の名前とか、覚えられないと困っちゃうもんね。」
「そうだね〜。」みさきちゃんは、本当にそう思いました。
「そろそろ、行かなくちゃ。トナカイ達も待ってるし。でもさ、みさきちゃんは大切な心を失くさないでね。」
「うん、わかったよ。」 ちょっぴり悲しくなって、みさきちゃんは、べそをかきました。
「あ、そうだ、この綺麗なオハジキ、返すね。大切にしていたんでしょ?サンタ様もとても褒めてくれるんだよ、お前の瞳はこの島の雪だるまの中で一番綺麗だって。目が無くなっちゃうって心配しないでも大丈夫。僕達は、名前をつけてもらった瞬間の姿で、住民登録されてるからね、返しても平気なのさ。じゃ、バイバイ、みさきちゃん。。。。ほんとに、ありがとね。。。。。」
瞳が少しキラッと光った気がしました。
そして、ヘンナちゃんは、パッと、嘘のように消えてしまいました。
夜空には青白いお月さまと、きらきら星が、浮かんでいました。
みさきちゃんはベッドに戻ると、しばらくいろんな事を考えていましたが、やがて眠りの湖の底へ、深く沈んで行きました。
次の朝、みさきちゃんは目を覚ますと、
「うーん、きのう何か凄い出来事があったはずなんだけど、なんだったっけな〜〜。」
そして窓のカーテンを開けようとすると、足元に、濡れて光る2つの。。。
「そうだ、大変だ、ヘンナちゃんだ〜〜。」みさきちゃんは落ちているオハジキを拾うと、ダッシュで階段を降りて「かあさあ〜〜〜〜〜ん、」と叫びました。
お母さんは朝御飯の用意をしながら、
「あら、どうしたのみさき、今日はずいぶん早く起きたのね。」と笑いながら言いました。
「きのうの夜ね、ヘンナちゃんが来たんだよ。」
「ヘンナちゃんて、雪だるまの?。」
「そうそう、空飛ぶトナカイじまの、失われた心の、、お鼻は真っ赤〜〜。」
みさきちゃんはあわてて話しているので、支離滅裂です。
「夢に出てきたのね。」
お母さんはニコニコしながら言います。
「ちがうよ〜、ほんとに来たんだもん。だって、ほら。」
そう言って、みさきちゃんは、手の中のオハジキを見せました。お母さんは、ちょっと迷った顔をしましたが、
「あら、よかったわね、それ大切にしていたんでしょう?」
「返しに来てくれたんだよ〜〜。宝物入れに、しまってくる〜〜。」
そう言うと、また部屋に向かってダッシュのみさきちゃん。
実はお母さんは昨日の夜遅くに帰ってきたお父さんが、
「これ、会社に行く途中公園によって、拾っておいたんだ。みさきの机に置いておくから。」
と言っていたのを、みさきちゃんには黙っていたのです。
何故って、それはお母さんに、大切な心がいっぱい残っていたから。
さて、みさきちゃんの見たヘンナちゃんが夢だったのか、それとも本当だったのかは、読んでくれた皆さんに「失われていく大切な心」が残っているかどうかで決まります。
私は、オハジキが濡れていたのはヘンナちゃんの涙だったのではないかと、信じています。
=======おしまい======
無断転用ヲ禁ズ
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ハンゲームのブログにも掲載しちゃってるので、また読んでくれちゃった方には、どうもm(o・ω・o)mゴメンヨ。
初めての童話で、ちょっと不自然なところも多いかと思いますが、重ねてごかんべんを。