小室直樹先生の見立て

さて、ようやく2冊読み終えた。とりあえず、急いで借りに行った図書館にあった分です。

数学嫌いな人のための数学―数学原論

数学嫌いな人のための数学―数学原論

もう一冊「資本主義社会のための革新」を読み終えた。

小室先生の言う数学とは、
俺が高校で習った数学とは全く違う。

社会を科学的に理解、分析する為の、
思考方法としての数学理論です。
これを基礎にするしか、経済や、社会の現象を科学的に理論付ける方法は、無いようです。

1冊目は、
微積分などの、ややこしい計算を説明する本ではなく、
あくまで論理学的思考方法の基礎としての数学であり、
それは、社会現象全てを分析、推測、検証する為に必要なものは数学理論なのだと、
俺は受け取りました。

2冊目のあとがきを、そのまま抜粋します。

著作権問題が発生するのかも知れないので(発表済みの論文とは違うので)、
とりあえず著作権に関わる権利者の名称と思われる部分をそのまま記載します。
但し、私は権利者の権利を侵害しようと意図するものでは無く、
全ての権利者の更なる発展、成功を願って、
一部を抜粋するものです。

小室直樹 経済ゼミナール 資本主義のための革新

小室直樹 経済ゼミナール 資本主義のための革新

2000年11月1日 第1版第1冊発行
著者     小室直樹
発行者    木村勝
発行所    日経BP
発売     日経BP出版センター(住所等は、省略します)
印刷・製本  大日本印刷株式会社
@NaokiKomuro 2000
ISBN4-8222-2902-5 Printed in Japan

以上

以下、原文抜粋

あとがき
ここまでお読み下さった読者は、もはや経済の達人である。
日本でこそケインズは生きている。投資と消費が増えたから景気が良くなったなんて発表されてみんなが納得する。有効需要の原理が活動していてケインズが生きている証拠ではないか。
その結果利子率が上昇するから投資増・消費増も打ち消されるなんて反論する者は誰もいない。一見、ケインズは無敵みたいだ。が、ケインズ政策の利き目が小さくなったのをみんなはなげく。
それもその筈、あまりにも長く利子率を二%以下に据え置いたので、「流動性の罠」に落ちて、ケインズ政策が利かなくなってしまったのだ!
ケインズ政策も、そればかりあまり長期にわたって続けると社会主義になるとケインズは予測している。日本はケインズの警告を無視したから社会主義になったのだともいえる。
ハーヴェイ・ロード仮説によると、ケインズ政策が正しいための条件は、役人が公正廉潔であることである。官僚制度が腐朽しつくした日本ではこの仮説はみたされないから、政策はフルに利きっこない。
今の日本では「科挙」の弊害が致命的になりつつある。中国明代での実験で証明されたとおり、高級官僚は、宦官よりも無能無策になりはてた。
今や、家産官僚が経済を指導するという日本型社会主義は、ソビエト帝国の末期を彷彿させるものがある。ソ連社会主義も資本主義の精神が無い故に滅んだ。ロシア経済を復活させるものが、もしあるとすれば、それは、資本主義の精神である。
日本経済を生き返らせるのも、資本主義の興起を擱いて他にない。その真髄は企業者精神に込められている。
資本主義の精神は衰退し、企業者精神も払底しているとき、今こそがチャンスである。
企業者精神を振興しベンチャーを起こす者こそ、産業革命におけるCaptain of industryのごとく資本主義の要請に応える者であり、時代のライオン(百獣の王)と成るであろう。

平成十二年(西暦二000年)神無月   小室直樹

以上


このあとがきを、著作権問題を考えながらも抜粋した理由は、
読んでいただければ明らかですが、
2012年の現代を生きる者として、
あまりに恥ずかしくなったからです。
10年以上前に、現在の日本をこれほどまでに予見できたその人を、
俺は知らなかったという、
なんというアホさ加減に、
あきれ果てた次第です。

俺は次の2冊を図書館に予約しましたが、買って読めるかたは、是非買ってください。

ちなみに、この本を読んでから、
本来の資本主義的企業者精神を持ちえている日本の企業を俺なりに独断的に考えた場合、
あてはまるのが、
ユニクロ」です。
革新的価値の創造
革新的素材の開発
革新的生産・流通・販売の結合
それを企業者自らが革新的意思を持って推進している事。

全てあてはまっているように俺には思えます。
真のベンチャー企業といえるのではないでしょうか。
おそらく、他にもそういった会社は存在するでしょう。

俺はユニクロの社員でも、応援する人間でもありません。

しかし、結果的にそう判断しています。

家産官僚に支配された資本主義は、社会主義化して滅び、
また、巨大化した企業も、
放っておけば、家産官僚化して革新的意思を失い、
それもまた、滅びる。

あ、ちょっと待てよ、これはどこかにあてはまる。

東京電力か。

多くの傘下企業を抱え、そこに自社幹部を天下りさせ私物化し、
集団的意思決定(家産官僚制度の模倣)の致命的な遅さ故、
革新的経営能力を失う。

ってことは、もう事故への対処は、
その企業には不可能ってことなのか?

政府にも、期待することすら出来ないのか?

現場で対応して下さっている方たちには、本当に敬意を表します。
しかし、意思決定に携わっている経営側は、
当事者能力に疑いがある。

小室先生が述べているシュンペーターの資本主義滅亡モデルに対抗する企業精神が無ければ、
現在の日本は救えないと、
俺は思うのです。

この企業精神こそが、維新だと、思います。

今、革新的企業者意識を持ちえる人達の全ての叡智を結集すべき時ではないのでしょうか。
核燃料は溶け落ちて、
どこに、どんな形で、どんな状態になっているのか、
誰にも実態がわかりません。

漏れ続ける汚染水は、一体どこに向かって染み込んでいるのかも。

なんか、維新をキャッチフレーズにしている政治家がたくさんいるようですが、
革新的とおもえるその言葉を、表面的に利用しようとする政治家に
惑わされては危ういと思います。

とりあえず、
小室先生の本をある程度読んでから、
あらゆることを判断しようと、俺は決心しています。

何故なら、
現在の日本における、
国家を自分の物だと考える前近代的な日本の家産官僚を、
どうやったら国民が法律で管理する近代的依法官僚に変えるのか、
手段が、見つからないからです。