ああ、中森明菜


来生えつこ加藤登紀子、二人の天才詩人は、
同じ一人の少女の心に憑依し、
正確に彼女の想いを掬い上げてしまう。

前者はプロフェッショナルとしてその少女をターゲットとし、
その矜持において彼女を描き切る。

後者は自分の為に書いたはずのその詩を見て、
直観してしまう。
「これは、私の唄じゃない。」そう、あの少女の唄ね。

二つの詩に出会った時、少女は呆然とする。
「この詩は私の想い、いえ私そのもの。」

熱狂する聴衆を前に、少女はあまりにも無防備に立ち竦んでいる。
雑踏の中で母を見失った子供のように。

そして今、壊れた心を抱えたまま、その少女はオトナになった。

唄い続ける事でしか、
あの頃の自分を慰める事は出来ないのだけれど。

そう、自分の為に唄って下さい。
誰の為でもなく、自分の為に。

モノクロームの過去に、
息吹を与え、
鮮やかな色彩を与える為に。

何処にいるんだ、中森明菜