共鳴する為に。

以前にも書いた村治佳織さんが奏でる「マーラー第5番アダージェット」を採譜することにした。
まぁ勝手にしろという事ですが、こうして宣言することをモチベーションの一部としたいので。

このギター用編曲ですが、僕は素晴らしいと思う。
オーケストラの曲なので、マーラーが大好きという方からは拒否反応があるでしょうが、
この編曲は、新しく生み出されたといっていい、オーケストラとは別物の、マーラーです。
でもね、マーラーがもし生きていて、これ聴いたなら、
「うん、まぁまぁいい線いってるじゃん。」くらいは、言ってくれるんじゃないかな。
こんなものなら、絶対演奏してはならん、とはならない気がする。私はギター側の人間ですから。

そしてね、村治さんの演奏だ。
採譜するために、リアルにほぼ一日中繰り返してこの曲を数日間聴いているのだけど、
そうだなぁ、たぶん合ってると思うんだけど、「孤独感」であるな、聴き取ったのは。
村治さんが感じているであろう、孤独感。

私の中の中森明菜は雑踏に佇む少女であり、宇多田ひかるは戦場という絶望をみつめる感情を押し殺した少女であった。

村治さんは、そうだな、
公園の隅っこで、ポツンと立って、友達が遊んでいるのを少し微笑みながら見ている感じだな。

「い〜〜れて〜〜」と、友達の輪の中に入っていけない。
豊か過ぎる感性は、誰かを傷つけることを極度に恐れる。
自分が傷つく事なんて、これっぽっちも怖くない。

「わたしは、ここで見ているだけで充分。見ているだけで、一緒に遊べる。」

この少女のような人って、必ずいるんだ。

これを見ちゃうと、僕には衝動が沸き起こる。

「そうじゃない、こっちにおいでよ。ね?。一緒に遊ぼうよ。」

ちょっと手を差し伸べようとすると、少女は泣き出してしまう。

そうか、そうだね。そのまんまで、じゃ、わかった。そうだね、わかったから。
泣かなくてもいいんだけど、もっと思い切り泣いちゃってもいいんだ。
うん、わかったから。

村治さんは、きっとこの演奏のように、
恋人と語り合い、触れ合い、確かめ合い、
この演奏のように愛される事を望んでいるだろう。

共鳴し、同調する為に、この曲を弾いてみよう。

現実なんてちっぽけなもので、こうして音楽を通して彼女をイメージすることは、
例えば彼女と実際に出会うことより遥かに楽しい。
というか、現実的に彼女と出会うことは可能性を測ればゼロに等しい。

これを逃避だと笑う人もいるだろう。
しかしね、僕はこれを想像力による現実の超越だと、言い張りたいのだ。

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君の黒髪は、やはりショートが似合う。
小さな金のピアスも、君によく似合っている。

あ、あれ、君だったのか?
確か、ピアノを弾いているはずなんだが。

なんか眩暈がしてきた。
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もし、採譜が誰かの鑑賞に堪え得るものに仕上がったのなら、
希望者に差し上げたいが、方法が見つからない。違法でもあるらしい。
これは、法律のほうが間違っているとしか、僕には思えない。
だって、音符どおり聴いて辿ると、
誰もが同じ道をたどることになるはずだからだ。
金というのは、そういった意味で、薄汚い。
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という事で、更新ペースは必ず落ちます。
僕は一人しか存在しておらず、分身が欲しいくらいだ。
最近躁状態のように更新してきましたが、
精神的にはすこぶる健康で、何の変わりもないままです。
脳からあふれ出る量が増えたのは、確実に、アンリ・ベルクソンの影響です。

===============おしまい================
映像を追記しました。