河童の幸福

おいらね、ヒトリポッチの奴が、大好きさ。
だからね、ホントにヒトリポッチな奴を、持って来るんだ。
だってさ、どうせヒトリポッチなんだから、構わないだろ?
たぶん、誰にも気付かれないしね。
おいらが祝福を与える。完全無欠な祝福さ。

可哀想だろ?おいらが持って来なけりゃ、ヒトリポッチのままさ。
おいらは、そいつらの叫びを聴くね。
叫び声じゃないぜ。叫びだ。

おいらんとこに来ると、みんな少し戸惑うみたいだけど、
しばらくすると、みんな、少し笑うよ。おいら、可笑しい顔してるからね。
そのうちに、ほんと、びっくりするくらい、笑うんだ。
泣きながら、笑うよ。ホントさ。

おいらは祝福するよ。その笑顔をね。
みんな知らないだろうけど、ヒトリポッチになるのも、されるのも、人間だけさ。
人間以外の世界は、誰もヒトリポッチにならない。石ころでもね。
人間は、賢くみえて、馬鹿なんだな。

幸せを探し過ぎて、死んじゃう奴がいる。
探す場所が、違うんだ。

幸せなんて、ちょっと馬鹿馬鹿しいくらい、呆気ないが、
すぐそばに、ある。

おいらと、あんたの、あいだに、あるんだ。
あんたと、誰かの、あいだでも、いいや。

石と、石のあいだでも、いい。

どっちか片っ方では、見つけられない。
あんたの中にも無いし、誰かの中にも、無い。

あいだ、に、あるんだ。

そこを探してみな。
そうするには、誰かを見たり、何かを見たりしなきゃいけない。

あいだには、いっぱい色んなものがあるから、幸せを見つけるのは難しい。

だけどね、そこにしか、無いぜ。

みんな知ってると思ってたけど、
おいらのところは、もう、人でいっぱいさ。
みんな持ってきちゃったからなぁ。

でもね、おいらんとこは、幸せで、いっぱいだ。
みんな、笑ってるからな。

ちょっと、誰もみてないところで、笑ってみな。
おいらが見えるかも知れないよ。


============おしまい=============