聴こえる言葉。聴こえない言葉。

入院している叔母のお見舞いに、かみさんと一緒に行って来た。
終末期医療に入っており、
鎮痛薬投与の為眠ったままだったが、
看護師さんに声を掛けていただくと、
叔母は僅かに目を開け、僕達を確認出来たようだった。

そしてまた、眠りについた。
一時間ほど病室にいて、
起きるかどうかわからなかったけど、
「また来るからね。」と声を掛けて、
病室を出ようとすると、
言葉にならないような言葉を、二言くらい、叔母が発した。

すると、かみさんが、
「うんうん、また来ますからね。」と、おばに向けて返事をして、病室を出た。

「叔母ちゃん、なんて言ったか判ったの?。」と、かみさんに尋ねると、
「うん、はっきりと、『ありがとね、ありがとね』って、言ったよ。」
僕には、「あ。。。あ。。。」くらいにしか、聴こえなかった。

叔母は、うちのかみさんをとても気に入ってくれていて、
お彼岸やお盆のお墓参りで一族が集まった時などは、
「いい嫁さんだね、いい嫁さん貰ったね。」と、
とても可愛がってもらっていた。

そうか、俺よりも、かみさんに気持ちを伝えたかったのかもな。

その二日後、叔母は旅立った。
昨年の夏は、元気にみんなで御寿司食べたのに、
暮れに自宅のベッドから転落して腰骨を骨折してしまって、
あっというまに様態が悪くなってしまった。

今月の誕生日を迎えれば、83歳。
残念だけど、
ほとんど女手ひとつで育てた息子(俺のいとこ)が50代で亡くなり、
その後約20年間、独り暮らしで乗り切ってきた。

お世話になったご恩返しはほんの少ししか出来なかったけど、
安らかに御休み下さい。