ハービー・ハンコック 

ザ・ピアノザ・ピアノ
ハービー・ハンコックについては多くの説明を必要としませんね。その演奏哲学は、世界の音楽シーン全てに多大な刺激を与え続け、意欲は衰える事を知りません。
さて、今回はソロ・アルバムをご紹介します。私はビル・エヴァンスがとても好きで、エヴァンスのソロ・アルバムと比較すると、エヴァンスが水しぶきのような軽やかにきらめく印象を感じるのに対し、ハービーはとても冷たく硬質なダイヤモンドや闇夜にギラリときらめくナイフのような、怜悧な光を感じます。エヴァンスはソロの中でもジャズの世界から大きく離れることは無いように思われますが、ハービーにとってはジャズもひとつのテイストに過ぎず、あらゆる音楽を超えてピアノの本質に迫ろうと、或いは音楽の本質そのものを追い求めているように、感じられます。このアルバムでは低音から高音部まで縦横無尽にその感情を表現し、次々と音の流星が流れ落ちてくるようです。録音も非常に素晴らしく、多分湿度管理された非常に状態の良いスタインウェイに完全な調律を施し、そういったスタッフの熱意もハービーはフィードバックしてくれているように思われます。聴いているうちにこの緊張した世界に引き込まれ、まるで自分が演奏されているピアノに向かい、自分の指が魔法のように動き始めるような錯覚を起こします。
一押しは”My Funny Valentine"でしょうか。どの曲も素晴らしいので、クラッシック、ロック、ポップス、ジャズ、そういった垣根を越えた音楽の美しさを堪能してみてはいかがでしょうか^^