マイルス・ディヴィス

Kind Of BlueKind Of Blue
実は私はビル・エヴァンスリーダーズ・アルバムから、次第にエヴァンスが参加しているアルバムを探して聴くようになり、このアルバムに辿り着いたわけですが、順序が逆で、こっちが先だったかな^^
緊張感、それはマイルスが産み出す統率力によって極度にまで高められ、もう荘厳としか表現のしようがない美というものが、ジャズとか、音楽とか、そういった垣根を全て吹き飛ばし、圧倒的な力をもってこのアルバムの中に閉じ込められています。吹奏楽器は息使いそのものが管を通して表現されるわけで、もっとも感情がエモーショナルに出易い所をマイルスはミュート(消音器)を使って消え入るようなピアニッシモを情感豊かに表現し、どこまで広がっているのかわからないような幽玄空間を産み出します。中世ヨーロッパの石造りの教会にいるような残響音も、このアルバムの大きな特徴であると、感じます。全てのプレーヤーに過剰なものが一切無く、シンプルであることが一番美しいのだということに、あらためて気付かされるのです。
マイルスの言葉が聞こえてくるようです。
「俺のペットはな、もうどうやって吹いてもいい音しか出ないんだ。俺の存在そのものと言ってもいい。参加してくれる皆が巧いなんてことは、俺は解り切ってるんだ。でもな、俺が求めてるのは、巧いとか、速いとかそういったことじゃ無いんだ。ただ、いい音を出してくれ。必要なのは、それだけなんだ。」
その最も困難なマイルスの要求に答えるべく、プレーヤーは才能の全てを動員して、このアルバムを完成に導いたのだと思います。
この中で一押しは”All Blues" 二本のサックスが息の入れ方、タンギングの有無、スタッカート、レガート、全てをぴったりとマイルスの管に揃え、淡々と美しいプレーが曲の最後まで続いており、マイルスの音楽に対する思想がとてもよく現れていると思うのです。
やがて自分の人生が終わるとき、お墓にまで持って行きたいと考えている、この1枚^^
===終わり===