「空飛ぶトナカイ島 エピソード2」

☆空飛ぶイルカサーフィンの巻き

 みさきちゃんは、今日は何故かとても懐かしい気持ちでベッドに入り、グッスリと眠っていました。
 もう小学校に通うようになって3年の月日が経っていました。
 さて、ここからはどう思い出しても、夢なのか、現実なのか、どうもはっきりしないのですが。。。
 窓の外で何かの気配。みさきちゃんは目を開けて窓のほうを見ると、カーテンの向こう側がぼんやりと光っています。
 みさきちゃんは誘われるようにカーテンを開けると、何とそこに。。。。。 
 「あ〜〜〜〜〜、ヘンナちゃん。」
 そうです、そこに雪だるまのヘンナちゃんが、ぽっかりと浮かんでいました。
 そう、幼い日の、あの夜のように。
 「みさきちゃん、元気そうだね^^。また会えて、とても嬉しいよ。今日はね、ちょっと御願いがあって、お話にきたんだ。」
 ヘンナちゃんは、少し心配そうに見えました。
 「実はね、空飛ぶトナカイ島で、今大変なことがおきているんだ。トナカイ達の鼻がね、なかなか赤くならないんだ〜〜。」
 トナカイの鼻は赤くならないと、空を飛ぶ力が無くなってしまうのでしたね。
 「え?じゃ〜、サンタさんがこれなくなっちゃうよ〜。」みさきちゃんは本当に心配になりました。
 「トナカイ島にはね、とても大きな氷の山があって、今までに1度しか溶け出したことはないんだけどね、それがさ、このところ少し溶け出して、気温がだいぶ上がってきちゃったんだ。それでさ、僕たち雪だるまが一生懸命磨いても、トナカイ達の鼻はすぐに元に戻ってしまうんだ。」
 「それって、地球温暖化と違うの?」そう、みさきちゃんは、今日の学校の授業で習ったばかりの言葉を使ってみました。
 「ちょっとね、違うのさ。」ヘンナちゃんはニヒルに答えました。
 「大切な心がね、どんどん失われているんだ。だからトナカイ島のある世界もどんどん狭くなって、気温が上がってきてるんだ。とても大変なことなので、僕達雪だるまとサンタ様達で話し合って、第2回空飛ぶトナカイ島議定書を全会一致で採択しました。」
 みさきちゃんは最後のほうはよくわかりませんでした。。。。。
 「サンタさんは、どうやってプレゼント配るんだろう。」みさきちゃんはプレゼントのほうも、とても心配なのでした。
 「だからね、今年はサンタ様達が特訓してるんだ、サーフィンの。なにせ空飛ぶイルカを使うのは、なんと1962年ぶりなんだ。毎日ジョギングも欠かせない。サンタ様達のほとんどが、ちょっとメタボ気味なんだ〜〜〜。」
 それは日頃の行いが…、と、ちょっと、みさきちゃんは思いましたが。
 「空飛ぶイルカは最大積載量がトナカイより少ないし、助走に海を走るのでサーフィンに乗れないと、サンタ様も空に舞い上がれないんだ。だからサーフィンの特訓さ。もう、少しだけ笑っちゃう姿なんだけどね^^。」
 ちょっとみさきちゃんも想像して、笑ってしまいました。
 「で、私、どうすればいいの?。」
 「あ、そうそう、それが肝心だった;;採択した議定書でね、ある歌をみんなに広めることになったんだ。なにせ今の音楽省担当のサンタ様達は力があるからね、しかもハイカラだし。」
 またしても、最後のほうは、よくわかりません。。。。
 「みさきちゃんは、ジョン・レノン知ってる?」
 「なにそれ?火星人?」ちょっとみさきちゃんはギャグ言ってみました。
 「じゃさ、お父さんかお母さんに聞いてみて。必ずどちらかは知ってると思うからさ。それで、ジョン・レノンのイマジンていう歌を、友達にも、先生にも、おじいちゃん、おばあちゃんにも、あかちゃんにも、ペットにも、ありとあらゆる生き物達に教えて、一緒に歌って欲しいんだ。そうすれば必ず、トナカイ島のある世界も少しずつ広がって、元の幸せな姿に戻っていくはずなんだ。ジョン・レノンの、イマジンだからね、忘れないでね。」
 みさきちゃんはカタカナは得意なので、しっかりと覚えました。
 「じゃ、また会えるね^^みさきちゃんは、とても強い大切な心をもっているんだからね。頼むよ。あ、言い忘れてたけど、英語の歌詞の意味が判らなかったら、海底まきがいっていう人のブログに、訳詞書いてくださいって、コメントしときなね。きっとがんばってやってくれるから。じゃ、頼んだよ、みさきちゃん。」
 そう言うと、ヘンナちゃんはまたしても嘘のようにパッと消えました。
 空にはきらきら星とお月様が浮かんでいるだけでした、あの日のように。
 みさきちゃんはまたいろんな事を考えていましたが、やがて深い眠りの湖に沈んでしまいました。
 次の朝、みさきちゃんはいつかのように、大変重要なことを、必死に思い出そうとしていました。
 なにせ、寝ている間のことを思い出すのは、難しいことですからね^^。
 突然ガバッと起きたみさきちゃんは猛ダッシュで階段を降りながら、
 「おか〜〜〜さ〜〜〜〜〜〜〜ん、たいへんだ〜〜へんなちゃ〜〜んだ〜、かせいじ〜〜〜〜〜ん。」
 いつものように、慌てて支離滅裂です。
 
 その日は日曜日で、お父さんも、お母さんも、テーブルで珈琲を飲んでいました。
 「ジョン・レノンの、イマジンていう歌、知ってる?」
 お母さんはお父さんを見て、微笑んでいました。
 「随分ませた歌知ってるんだな〜、みさき。」お父さんが言いました。
 「もちろん、知ってるさ、なんなら、歌おうか?」
 みさきちゃんは別にそういうつもりではなかったのですが、成り行きにまかせることにしました。
 お父さんは、よく弾いているギターをケースから取り出すと、ジャ〜〜ンとチューニングを確かめてから、その歌を歌い出しました。
 やがて、お母さんも、一緒に歌っていました。
 サビを繰り返すうちに、みさきちゃんもメロディーと歌詞を聞き覚えて、少し歌えるようになっていました。
 みさきちゃんは、お父さんも結構やるじゃんと、見直しました。
 そうして、そこから、大切な心も元気を取り戻していくようでした。

========終わり=========
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