オニの系譜 その9

おいらが独りぼっちにされた人間をさらうという話は、以前にしたことがある。
人間は、独りぼっちにしても、されてもいけないという警告の意味で。

玉を抜くは、本来「魂(たま)を抜く」を当てる。

おいら達の巣には、魂(たま)がたくさんいる。
実体としての、人間を集めたわけじゃない。

魂が入った後にもかかわらず、
そいつが本当に孤独にされ、
そのあまりの恐怖におのれと魂のかかわりさえ失いかける。

そいつはね、そのままだとやがて魂割れを起こす。
実体としての肉体が生きたまま、魂が割れ、失われる。

寿命を終えた肉体からならば、魂はそのまま誰かが受け継ぐ。

魂割れするほどに、そんなに独りぽっちの奴らから、
間に合えばおいら達が魂抜きする。

そいつは周りを感じるすべ(術)を失っているので、
真正面から近づいてもそいつがおいらの姿を捉える心配はないのだが、
背後から近づくのがおいら達の流儀だ。
そして、尻の穴からはいり、目から抜ける。
抜けると、はい、一丁上がり。魂はおいらの頭の皿の上にある。

その一連の行為を視線の端にぼんやりと捉えた人間たちの伝承が、
「尻こ玉を抜く河童」の伝説となった。

魂は、割れてしまえば世界から永遠に失われてしまう。
魂は、そもそも与えられた数に、限りがあるのだ。
減ると、減ったまま戻らない。永遠に、減り続けるものなのだ。

ずっと減らずに受け継がれていたのだが、
いつのころからか、魂は減り始めた。

つまり、誰かに入るはずの魂が少なくなり魂無しの人間が増え、
しかも、せっかく魂が入ったはずの人間から魂が失われているのだ。

そうなったときから、おいら達は積極的な行動を始めざるを得なくなった。
そうならなければ、おいら達はそもそも産まれていなかたった。
産まれるはずのない呈という、
呈のなかでもかなり孤独な存在が、
我がガッパ一族だ。

魂を失った人間、魂が入らなかった人間は、
あんた達にとっては悪魔のような人間として現実を生きることになる。

========次回、おそらくおしまいになるはず・・・==========
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