オニの系譜 その最終回

本来、存在とは「自己(self)」と、「魂(soul)」で成り立っている。
その存在は、長い年月をかけて「心(mind)」を幻想した。
自己と魂は密接に結んでいるが、お互いを認め合うための術が無い。
その中間に「心」を置かざるを得ない。
人間は、他の存在とは桁違いにその「心」がでかい。おいら側から見れば、肥大といってもいい。
そのでかさ故に、心は魂を抑え込もうとし、やがて魂を破壊する。

別においら達が魂を抜こうが、魂割れしようが、その人間が死んでしまうわけではない。
しかし簡単に言えば、
そいつは悪い奴になる。僅かな例外はあるが。
恨み、妬み、盗み、子ならば親殺し、親ならば子殺し、自分殺し。
ろくな事をしない。

じゃぁ、魂抜きなんてやめてくれって言われるかも知れないが、
抜かなきゃ壊れちまう。そして、壊れたら、もとには戻らない。確実に減ってしまうんだ。

びっくりすることを「たまげる」っていうでしょ。「魂消る」ね。

その時さ、魂は本当に、一瞬肉体から離れるんだ。
長ければ気を失ったり、ひどけりゃ死んじゃうこともある。

一瞬離れて、ショックが魂まで及ばないようにするんだね。

まぁ魂を語ればこれまたきりがないから、これくらいにしよう。

おいら達のようなオニの系譜に連なるものたちは、
はっきりとは捉えられないけど、
「ふっ」ととか、「ちらっ」ととか、「あれっ」ととかいうように、
気配を伝えることはある。

視野の端に佇むもの。

おるものはおるとしか、言いようが無い。

たいがいおいら達のようなものたちは、
別に何かいたずらしているわけじゃなくて、
世界の成り立ちの一部分を守ってるだけなんだ。

そう考えたほうが、楽しいと思うけどな。どうだろう。

===========おしまい===========
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